螺旋境界
      
      
        1話 螺旋に潜む影
  
  ―――その日も朝のニュースは何時もと変わりは無かった。学生には、どうでも良い政治関連、殺人事件、芸能界のいざこざ。 
 何一つ変化など無かった。ただ、淡々と流れていく日々に退屈さえ感じる。 
 そんな中、付けっぱなしだったTVからハデな見出しと音楽で今日のスペシャルトピックが始まる。 
 
 テーマは、「アニメ・ゲームの世界と現実の境界」…という長ったらしくセンスの欠片もないものだった。 
 この手の類は、だいたい少し年輩の評論家が出てきて最近の若者の脳はゲームで弱くなっているとか、教育に悪いアニメや漫画が皆をおかしくしている等、それらの趣味を遺憾とする発言するものが多い。 
 
 ―――暫く見ていたが案の定、期待通りの展開になって来たので俺はTVの電源を落とした。 
「姫ちゃん、何で消しちゃうのよぉ〜!?」 
「うわっ!凪穂、いつの間に―――」 
 突然の彼女の来たのに驚いた。 
「それに、姫ちゃん言うな!それは俺のネットゲーの持ちキャラの名前だろ」 
「ええ〜、いいじゃん別に〜減るものじゃないんだしさ」 
「減られても困るが、男に姫はないだろ」 
「んじゃ、女の子になっちゃえばいいじゃん。あたしは〜百合模様の方が好みだし…それで、姫ちゃんとラブラブするの♪」 
「お前の脳味噌、腐ってる―――」 
「んんん、とってもトロピカルでスパイシーよ♪」 
「…意味分からん」 
 こんなバカなやり取りも日常茶飯事だ。彼女は真桐 凪穂(まきり なぎほ)。近所に住む今話題の腐女子というやつだ。 
 コイツに百合、BL関係の話題で勝てる奴なんて少なからず俺の周りにはいない。 そんな凪穂のせいで、俺が男ながらもBLに興味を抱いてしまいそうになったこともある。 
 彼女は、そんな洗脳トークという必殺技で次々に学校でBL信者を増やしていってる。 
 ―――ちなみに、俺の本名は七瀬 飛鳥(ななせ あすか)。当然だが姫ではない。 
「そんなことより、お前何しに来たんだよ?」 
 凪穂に、それとなく訊いてみる。 
「そうだよ!姫ちゃん…忘れるところだったよ〜」 
 少し悪戯めに微笑む凪穂。この表情をする時は、いつもロクなことを考えてないから困る。  >>続きを読む 
         |